サイボウズ株式会社、パートナー営業部副部長の伊藤英高です。サイボウズは普段「働き方改革の先進企業」として、メディアに取り上げていただく機会が多いです。しかし、サイボウズがまだ「働き方改革」を打ち出す前、私が所属する営業部は、働き方改革からは程遠い「ガラパゴス」でした。
そんな状態から、ITツールを活用し働き方への意識を変えるまでのストーリーを、Cybozu Days 2017 Tokyoで登壇した内容を基にご紹介します。
提供:ログミー
私がサイボウズに入社した2008年頃は、営業部独自の「ガラパゴス」なルールがいろいろありました。
まず1つ目は、出社時間。全社は朝9時なのに、営業部の新人は7時出社でした。会社に着いたら、毎朝60分から90分かけて日経新聞を読み、気になった記事について議論していたのです。
2つ目は、「営業職に配属される新人は、飛び込み営業で100万円の売上を立てる」というルールです。渡されるのは、自分が飛び込み営業するエリアの地図1枚だけでした。
しかも、先輩はみんな忙しく、何も教えてくれません。つまり、「とにかく現場に出て経験を積め」ということ。私自身は、営業なんてこんなものだろうと思っていました。
しかし、あるとき、マーケティング部の部長から「君たちはガラパゴスのルールで過ごしているんだよ」と指摘されたのです。さらに、「コミュニケーションスキルが低い」とも言われてしまう始末。がんばって売上を伸ばしてきたのに、そのように思われているのかと落胆しました。
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そうこうしているうち、2009年に大阪へ転勤することになりました。当時の大阪営業部は私と上司のみ。2人だけで近畿2府4県をカバーしないといけない状況だったのです。
しかも、大阪には本社機能がありません。例えば、技術的なクレームが起こると、まずいったん私が対応しないといけない。さらに、総務上の手続きやセミナー資料の作成など、すべて自分でしなければならない。当たり前のように、毎日終電で帰っていました。
そんなある日、上司が突然退職することに。しかも、東京本社からは「新たな人員が補填できない可能性があるけど、大丈夫ですか?」と連絡が入りました。つまり、たった一人ですべてのお客様を担当しなければいけない状況になったのです。
いったいどうすればいいのか。悩んだ末、ひとつの結論に至ります。それは、「一人で抱え込まない」こと。
幸い、事務のアシスタントがいたので、協力を仰ぎました。まず行ったのは業務の棚卸し。「自分じゃないとできないこと」と、「自分じゃなくてもできること」のリストアップです。
私のスケジュールはすべてグループウェアで情報公開しており、誰でも見ることができました。したがって、営業の日程調整はアシスタントでも可能です。また、製品に関する問い合わせや、「カタログを補填したいので送ってください」といった依頼もアシスタントが対応できます。
とはいえ、役割分担できたとして、どう運用するのか。そこで思いついたのが「メールワイズ」です。メールワイズとは、個人で受け取っているメールをみんなで共有できる、メール共有ソフトです。
メールワイズを導入する前は、私宛のメールをコピーし、アシスタントに「この資料を何部送ってください」と依頼していました。つまり、販売店→私→アシスタント→販売店と、どの業務もすべて自分が介在する非効率な状態だったのです。
メールワイズを入れることによって、アシスタントは、私宛に来たメールをすべて見ることができます。その結果、「必要な情報を調べておきました」「電話がありましたが、対応したので既読にしていいですよ」といったコミュニケーションがとれるようになったのです。
正直、私も導入前は不安でした。特に営業は「自分で対応しなければ」と思い込んでいる人が多い。でも、早く正確な回答ができれば、アシスタントによる対応でも問題ありません。
また、業務を分担できたことで、以前よりもお客様と密なコミュニケーションをとれるようになり、効率的に仕事が回るようになったのです。
3年後、私は東京に戻りました。そこで、まさかのガラパゴス第2幕が開きます。
東京へ戻ってきてすぐ、大きな販売店様を担当することになったのです。対応メンバーは2人。人員を増やしてほしいと要望したものの、「ちょっと我慢してくれ」との回答。メールや電話がひっきりなしで、仕事が全然追い付きません。
結局2人とも、土日に仕事をしていました。でも、このままだと両方つぶれてしまう。そこで話し合って、ルールを決めました。それは、「休むときはしっかり休もう。その間にきた電話やメールは、もう1人に転送して対応しよう」と。その結果どうなったか。1人が休みのときは、もう1人の業務量が2倍になります。完全にブラックですよね(苦笑)。
その後、なんとかチームメンバーは増えました。しかし、また別の問題や悩みが出てきます。東京の営業部では、特定のパートナー様を、個別で担当する営業スタイルをとっていました。でもそのやり方では、ノウハウは属人化してしまい、レバレッジが効きません。
そんなある日、事件が起こります。部下が突然「フランスへ行くから退職する」と言い出したのです。これはやばいことになってしまった...。というのも、業務が属人化していたので、部下の仕事内容について誰も把握していなかったのです。
この資料では、これらのことを紹介しています。
・数字で見るメール利用の実態
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せめてメールだけでも見られるようにしてほしい。情報システムの担当者に相談しました。「◯◯さんが退職するので、過去のメールを全部抜き出してください」と。
ところが、「メールは個人のものだから、退職したら全部消去します。必要なものは退職前に転送しておいてください」との回答が来たのです。
私は思いました。「はあ?そもそもメールの情報は会社の資産のはずでしょう?」「何が必要かなんて、今はわからないでしょ」と。サイボウズは情報共有の会社なのに、引継ぎがうまくできず、販売店様やお客様に迷惑をかけてしまうかもしれない。
すごく怒りを覚えましたが、なんとかしないといけない。そこで、大阪時代に活用していた「メールワイズ」を導入したいと提案しました。うちのチームは、新しいことをポジティブにとらえるメンバーが多いので、当然「いいですね、やりましょう!」と言ってくれるだろうと思っていました。
しかし、現実は甘くなかったのです。
メールワイズの導入を提案したところ、反対意見がたくさん出てきました。「個人宛のメールを共有?業務効率が落ちますよ」「モバイルで使えないと無理ですね」「そもそもなんで導入するんですか?」等々。
開いた口がふさがりません。私たちは普段、いろいろな会社の情報システム部の方に「メールワイズはいいですよ。コミュニケーションが良くなりますよ」と提案しているのに、社内で反対理由が出てくる。
そのとき私は初めて、システムを導入する立場の気持ちを理解できました。これは結構たいへんな作業だな、と。ただ、絶対にうまくいくという確信があったので、行動に移します。
まず、「移動中に作業したい」という意見に対しては、「モバイルで使える環境を作ればOKだよね」と。当時、モバイルアプリのベータ版を開発している最中でしたので、開発担当者に「私のチームが実験台になって、必要な機能や課題をいっしょになって作ります。だから使わせてください」と申し出たのです。
各方面に働きかけた結果、ようやくメールワイズを導入することになりました。今まで1対1でつながっていたものをメールワイズで受け取り、みんなでアクセスする形です。また、パソコンだけでなく、スマホ、タブレットなど、さまざまな端末で操作することができるようになりました。
メールワイズを使い始めて3ヵ月、メンバーの行動に変化が出てきました。まず、メールを共有することによって、「この手法はいいな」「この問い合わせは多いから、テンプレートを作ろう」といった意見が出てきました。また、「これ、やっておきましょうか?」「もう完了しています」「◯◯さん大丈夫ですか?」など、コメント機能を有効活用した書き込みが少しずつ増えてきました。業務効率を向上させるためにメールワイズをどう使えばいいか、議論されるようになったのです。
さらに、「この件、私がやっておきましたよ」と代理で対応してくれるメンバーも出てきました。良い意味での「おせっかい」ですね。隣の人のメールを見て、助けてあげる。ただITツールを入れただけなのに、チームの風土が変わったのです。
今は早く帰れる日も増え、休みたいときにしっかり休める体制になりました。チームの売上も6億円から12億円へ。2倍もの成果が上がっています。
メールは、決して個人のものではなく、会社の資産です。属人化させる理由はどこにもありません。もしかすると、メールが営業の働き方改革を拒む大きな要因となっているのではないでしょうか。「営業の僕じゃないとダメなんです」「今までこのやり方でやってきたから」といった既成概念を疑えば、いくらでも働き方改革ができるはずです。
世の中の働き方改革といえば「早く帰れ、残業するな。でも売上は上げろ」。その多くは、営業にしわ寄せがきていると思います。
今のやり方を見直してみよう。そのためにメールワイズなどのITツールを活用してみよう――そんな意識の変化が大事なのです。
営業が変われば、世の中の働き方改革はもっと進むはずです。いっしょに既成概念の壁を越えていきましょう。
OutlookやGmailなど一般のメーラーではできない複数ユーザーによる
メールの管理・共有をすることで、チームでのメール対応を効率化します。