営業でのAI活用法5つ・具体例（プロンプト付き）

営業でのAI活用、今どこまで進んでいる？

現在、一般的な営業活動に生成AIはどの程度取り入れられているのでしょうか。

株式会社ハンモックが行った「生成AIの営業活用に関する実態調査」によると、「営業活動に生成AIを活用していますか？」という問いに対し、「活用したことはない」と回答した人が約7割を占めました。つまり、営業活動における生成AIの活用は、まだ浸透していないことがわかります。

それでは、すでに生成AIを活用している人はどのような業務に活かしているのでしょうか。

利用者への「生成AIを活用している（またはしていた）業務は？」という問いに対し、「メール・提案文の作成」が56.9％となり、半分以上の人が文章作成をメインに利用していることがわかります。

次に回答が多かったのは「商談準備（想定問答、資料作成など）」で42.9％、そして「顧客対応（チャットボットなど）」34.5％、「顧客情報の整理・分析」27.7％と続きます。

このように、生成AIは営業活動の幅広い場面を支援しており、今後さらに活用が進むでしょう。

出典：株式会社ハンモック
生成AIの営業活用に関する実態調査「3割の企業が生成AI活用 時間短縮や成果向上などの効果を実感」

営業で使われるAIツール早見表

営業効率化の生成AIツールは多数登場しています。目的に合わせて使い分けることで、より効果的に活用できます。

ツール名	特徴	営業での主な活用シーン
chatGPT	自然な日本語表現と高精度な文章生成に優れる。	営業メールや提案文、トークスクリプトなどの文章作成
Gemini	GoogleドキュメントやGmailなど、Google Workspace全体との連携が強み。	顧客データの要約・整理や商談前の情報収集
claude	長文の処理や自然な日本語要約が得意。安全性にも優れる。	長文議事録や顧客履歴の要約、顧客に合わせた提案書の下書き作成
Microsoft Copilot	Microsoft 365に統合され、各アプリでAI補助が可能。	メールの下書きや資料作成、会議議事録の自動生成
Perplexity AI	出典付きで回答を提示。情報の信頼性が高い。	業界リサーチや競合の比較、顧客情報の下調べ
Notion AI	メモ作成やナレッジ共有を効率化できる。	社内メモ作成やナレッジ共有の効率化
HubSpot AI	CRM連携型のAIで、営業メールや顧客対応を自動化。	顧客に合わせたメール提案や次のアクション提示
Salesforce Einstein	Salesforce製品と連携し、営業データを分析・支援。	商談予測や顧客インサイトの分析
Zoom AI Companion	リモート会議の要約やアクション抽出を自動で行う。	会議議事録の要約やフォロー内容の提案
Zapier	さまざまなツールと連携し、業務フローを自動化。	「フォーム入力→メール生成→CRM登録」など一連の自動化

営業活動での生成AI活用法5つ

生成AIはさまざまな営業活動で活用できます。生成AIを導入することで、営業活動はこれまで以上の成果が見込まれるでしょう。特に以下の5つが例として挙げられます。

• 商談前のリサーチ効率化
• トークスクリプト・提案文の自動生成
• 営業・フォローメール文の作成
• 顧客情報の整理・要約
• 失注理由分析・改善案の抽出

ひとつずつ解説していきます。

1）商談前のリサーチ効率化

営業活動では、商談前の情報収集が提案の質を左右します。AIを活用することで、顧客企業のWebサイトやニュースリリース、SNSなどの公開情報をもとに、関連データを短時間で要約・整理できます。

また「自社と関係しそうなトピック」や「直近の経営課題」を優先的にピックアップすると、より良い提案の切り口にもなります。

「Gemini」や「Perplexity」を使えば、出典付きで裏付けのある分析ができます。

プロンプト例
以下の会社情報をもとに、商談前に把握しておくべき重要ポイントを3つに整理してください。

【会社名】株式会社○○
【自社との関係】既存顧客／新規提案予定
【目的】提案前に企業理解を深め、商談の精度を高める
【出力条件】
・重要な情報を3項目に整理
・営業担当者が短時間で把握できるよう簡潔にまとめる
・公開情報（ニュース・SNS・Webサイトなど）を中心に要約する
【出力形式】
① 事業内容の概要（業種・主な製品やサービスなどを簡潔に）
② 最近のトピック（ニュースリリース・SNS・業界動向などから3つ）
③ 提案時の着眼点（特に自社製品・サービスに関係がある領域）

※営業担当者が短時間で商談準備できるよう、要点を簡潔にまとめてください。

2）トークスクリプト・提案文の自動生成

AIを活用すれば、特定の担当者に頼らずに商談のトークスクリプトや提案文を効率的に作成できます。顧客課題や提案テーマを入力するだけで、話の流れや質問例を自動生成でき、準備時間を大幅に短縮できます。

また、「導入背景 → 提案ポイント → 成約後の価値」というストーリー化も容易で、より明確で説得力のある提案内容を作成できるでしょう。

さらに初回訪問用・再提案用などいくつかのパターンを生成AIでテンプレート化し、チームで共有すれば、営業教育やスキル標準化にも活用可能です。生成AIを導入することで、営業全体のスキルアップと顧客満足度の両立が可能になります。

3）営業・フォローメール文の作成

AIを活用すれば、商談内容や相手の反応をもとに状況に合わせたメール文を自動で下書きできるほか、GmailやOutlookと連携すれば情報共有もスムーズです。

「すぐ返信すべきか」「感謝を優先すべきか」など文面の方向性もAIに相談できるため、効率的にフォローメールを作成できます。

組織全体の営業文書力が底上げされ、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

プロンプト例
以下の条件をもとに、提案後のフォローメール文を作成してください。

【相手】株式会社○○ 営業部 △△様
【内容】提案資料を確認したが、検討に時間がほしいとの返信を受けた
【目的】印象を損なわず、誠実で前向きなトーンで再提案につなげるフォローメールを作成する。
【出力条件】
・丁寧で誠実、かつ前向きなトーン
・200文字以内
・営業メールとして自然な言い回し
・構成：「感謝」→「相手の意向への理解」→「再提案や今後の連絡への前向きな一文」
【出力形式】
・件名
・本文

4）顧客情報の整理・要約

AIを活用すれば、CRMのデータやヒアリングメモ、メール履歴など点在する情報から、顧客ごとの要点を抽出した「顧客理解メモ」を自動生成できます。こういったメモや情報共有があれば、急な担当者変更や商談引き継ぎの際にも、背景・関心・過去対応を短時間で把握でき、対応品質のばらつきを防ぐことが可能です。

また、社内共有フォーマットに沿って要約を生成すれば、チーム全体での営業ナレッジ化を促進します。チーム全体で情報を共有・活用することで営業能力の標準化にもつながります。

5）失注理由分析・改善案の抽出

失注案件のメモや商談記録をAIに読み込ませ、要約することで「価格」「時期」「競合」などの共通パターンを可視化できます。手作業では見落としがちな傾向も、自動分類やキーワード抽出によって客観的に整理でき、再提案の糸口や営業戦略の見直しに役立つでしょう。

さらに、失注理由をチームで共有することで、改善策を定期的に議論する仕組みづくりに発展させることもできます。個人の経験に依存しない継続的な学習サイクルを構築し、チーム全体として次の成果につなげることが可能です。

プロンプト例
以下の失注案件メモをもとに、共通する課題と改善の方向性を整理してください。

【目的】営業チーム全体での再発防止と提案精度の向上を図る。
【出力条件】
・商談記録を簡潔かつ具体的にまとめる
・原因分析だけでなく、前向きな改善提案を含める
・チームメンバーにも理解しやすいように整理
【出力形式】
①失注理由の共通点（上位3つ）
②改善に向けた行動提案（具体的に3点）
③再提案時に活かせるポイント（顧客対応・提案書作成などの観点で）

【具体例】AIでメール営業を効率化（無料ツール使用）

無料で提供されている生成AIだけでも作業効率を大幅に高めることが可能です。代表的なツールとしては、OpenAIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」が挙げられます。

ここでは、その具体的な活用方法をご紹介します。

Step1）初回アプローチメールの作成

「相手業種」「提案内容」「目的（例：アポイント獲得）」をAIに入力するだけで、自然で丁寧なトーンの文面を自動生成できます。さらに、相手企業の情報をあわせて読み込ませることで、その企業の状況や最新ニュースに合わせた提案の切り口も導き出せます。

また、AIが提示した回答をもとに自分流に調整すれば、より自然で温かみのある文章に仕上がるでしょう。作成したメールテンプレートをチームで共有すれば、営業担当者ごとの文体のばらつきを抑え、品質を一定に保つこともできます。

プロンプト例
以下の条件に基づき、新規営業の初回アプローチメールを作成してください。

【相手】株式会社〇〇　営業部長　△△様
【自社製品】（ここに自社製品の概要・特長を記載）
【目的】自社サービスの紹介と商談アポイントの獲得
【出力条件】
・本文と件名の作成
・200文字以内
・丁寧で押し付けがましくないトーン
・相手企業にとってのメリットを簡潔に示す
【出力形式】
・件名
・本文

Step2）提案後のフォローメールの作成

AIを活用して、提案内容の印象づけ・相手に合わせた自然なフォロー文を自動生成できます。

たとえば、「打ち合わせ後の感謝」「内容の補足」「次回に向けた提案」など状況を指示することで、細かい状況の違いに応じた文面を生成できます。これをもとに、自分なりの表現や言葉を使って修正すれば、担当者の人間味も伝わるでしょう。

AIが出力した文面は、あくまで「たたき台」として活用し、そのまま送付することは避けましょう。打ち合わせ中に出たちょっとした話題や相手の関心ごとを一文添えると、より親近感のあるフォローができます。

プロンプト例
以下の条件に基づき、提案後のフォローメールを作成してください。

【相手】株式会社〇〇　営業部　△△様
【状況】提案資料送付後、相手からの返信がまだない状態
【目的】提案資料送付後のフォローと、次回打ち合わせ日程の確認
【出力条件】
・本文と件名の作成
・150〜200文字
・誠実で温かみのあるトーン
・まずは前回の打ち合わせの感謝からはじめる
【出力形式】
・件名
・本文

Step3）メール文の校正・ブラッシュアップ

Step1や2で下書きを作成し、自分なりに修正したメール。これを再度生成AIに読み込ませ、より正しい文章にブラッシュアップしましょう。特に文章のトーンが統一されると、より読みやすくなります。

注意すべきなのは、AIに校正依頼して出力された文案を鵜呑みにし、そのまま送付してしまうことです。AIは完璧ではありません。数字や情報に間違いがないか、最終確認は人間の目で必ず行いましょう。

プロンプト例
以下の営業メール文を、より読みやすく丁寧な表現にリライトしてください。

【目的】誤字脱字を修正し、文のトーンや言い回しを統一して印象を良くする。
【出力条件】
・誤字脱字や不自然な言い回しを修正する
・敬語・文体をビジネスメールとして自然なトーンに整える
・200文字程度に収める
【出力形式】
・リライト後の本文のみ出力
【メール本文】
〜（ここに自分の文を貼り付ける）〜

Step4）電話トークスクリプトの下書き

生成AIを活用して前もってトークスクリプトを用意しておけば、不慣れな電話でのやりとりも自信をもって行えるでしょう。

たとえば、過去に送ったメール内容や提案資料をAIに読み込ませ、内容を理解した上でトークスクリプトを生成させることができます。前回の打ち合わせ内容を踏まえて話すべき内容を整理してもらえば、伝え忘れや言い回しの迷いを減らすことができるでしょう。さらに、自分の話し方やトーンに合わせて修正すれば、自然で説得力のあるトークに仕上がります。

プロンプト例
以下の条件をもとに、電話営業トークスクリプトを作成してください。

【相手】株式会社〇〇　営業部△△様
【目的】自社サービスの紹介とオンライン商談への誘導
【対象者】中小企業の人事担当者
【出力条件】
・最初の30秒で相手の興味を引き、全体で3分以内
・親しみやすく、丁寧で押し付けがましくない言い回し
・相手の課題意識に寄り沿った質問を1〜2つ含める
・相手の質問や返答を想定し、会話形式で出力
【出力形式】
・会話形式のスクリプト

営業で欠かせないメール作業や電話は、大事な仕事である反面、準備に時間がかかり、どうしても流れ作業になりがちです。

生成AIを活用すれば、文面の下書きやトーク内容を自動で提案でき、作業効率と内容の質の両方を高められます。

AIの提案した文案を下敷きに、自分なりの言い回しや相手に合った受け答えを加えれば、より親密な関係構築につながり、成果の向上が期待できるでしょう。

生成AIの活用で営業を効率化し、チームで標準化しよう

生成AIは営業活動のさまざまな場面で頼れる存在です。メール作成や顧客情報分析を効率化し、提案の質を高められます。

データをチームで共有すれば、属人的な営業から脱却し、スピードと質を両立できます。営業の現場をもっとスムーズにしたい方は、「メールワイズ」を活用してみてください。チームでのメール対応を一元管理し、さらに効率的な営業活動を実現できます。