クレームは、その対応の仕方によって、顧客との信頼関係をいっそう深めることもできますし、逆に関係を悪化させてしまうこともあります。対応者によって内容に大きな差が生まれないよう、対応方法をあらかじめ決めておきましょう。最初に、クレーム対応の4つの基本と心構えから見ていきます。
クレーム対応では、以下の4つのことを基本としましょう。
クレームを受けた人によって対応にバラつきがでることのないよう、ルールはあらかじめ決めておきましょう。
クレームメールを受け取った際には、まずはそれがどういう意図なのか探りましょう。クレームメールを送るという行動には、必ずそうさせた理由があります。
メールではクレームの内容が把握しにくい場合、電話での聞き取りをおすすめします。チャットツールがあると、電話を好まない方へも対応可能です。
そして、どのような対応をしたのか記録に残し、社内で共有することで、今後の対応に活かすことも可能です。
クレームメールへ返信をするときは、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
クレームメールには、遅くても24時間以内に対応しましょう。可能ならば1~2時間以内に対応しましょう。迅速に対応することで、「素早く誠実に対応されている」という印象を与えることができます。クレームの内容によっては、すぐに対応できないケースもあるでしょう。そのような場合、社内で対応が進んでいることを伝え、「〇日以内に改めてご連絡します」と返信します。
自動返信システムがあれば、休日や夜間のクレームメールでも、ひとまず受け付けたことを相手に伝えることが可能です。
対面や電話での対応と違い、メールのクレーム対応では、文面だけで相手に謝罪の気持ちを伝えなければなりません。十分に注意しているつもりでも、失礼な対応と受け取られてしまう可能性がありますので、失礼のないような表現に配慮する必要があります。「お手数ですが」「恐縮ですが」など、相手の気持ちを和らげるクッション言葉を用いて工夫しましょう。
例えば、代替品を送る場合には、次のように書きます。
・NG「代わりの物を送ります。手元にある物はそちらで処分してください。」
・OK「代わりのお品物を送付いたしますので、お受け取りをお願いいたします。お手元の商品は、お手数ですがそちらでご処分ください。」
メールを返信する前に、クレームメールの送信者がどのような人物なのか確認する必要があります。優良顧客なのか、新規顧客なのかによって、表現は変わります。過去の対応履歴を必ず確認しましょう。以前にもクレームがあった顧客の場合、「またか」と思っている可能性が高いため、慎重な対応を心がけます。
送信前には入念に文章のチェックをしましょう。誤字脱字や表記の誤りはもちろんのこと、分かりやすい文章か、不快な印象を与えないかなどを、読み返して確認します。先輩や上司など、第三者にダブルチェックを依頼してミスを防ぎましょう。クレームメールの返信では、焦りや不安から、いつもなら考えられないミスを犯すことがありますので、ご注意ください。
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メールでのクレーム対応には、対面や電話とは違い、しっかり準備や内容確認をした上で送信できるというメリットがあります。ここからは、具体的な返信メールの書き方と構成についてご紹介しましょう。
ビジネスメールの件名は、ひと目で内容がわかるように書くのが基本です。クレーム対応メールの場合は、「◯◯についてのお詫び」とするのがわかりやすく、おすすめです。反対に、「お問い合わせをいただいた◯◯の件」といった件名では、謝罪の意思を伝えることができませんので、ご注意ください。いただいたメールにそのまま返信(「Re」が件名についたままに)しないようにしましょう。
メール本文は、最初に相手の宛名を記載します。法人であれば、社名と担当部署名や役職名、敬称付きの個人名を記載してください。個人の場合は、氏名と敬称のみで問題ありません。打ち間違いや変換間違いがないように気をつけましょう。
クレーム対応のメールでは、状況に適した挨拶を選びます。利用頻度の高い顧客の場合「平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます」、利用頻度の低い顧客の場合「弊社のサービスをご利用いただき、心より御礼申し上げます」といった丁寧な挨拶文を使い分けてもよいでしょう。
利用頻度の低い顧客に対して「格別の」を用いるのは逆効果です。日常的なビジネスメールで使われる「お世話になっております」という挨拶や、個人向けの「いつもありがとうございます」といった書き出しは、クレーム対応のメールとしてはカジュアルになるので避けましょう。
相手のクレームの内容と、何に対して不満を抱いているのかを把握した上で、それに対する謝罪文を記します。何に対する謝罪なのかが明確でない場合、全面的に非を認めたと映ることがあります。こちらに落ち度がない場合は、相手を不安(不快)にさせた、迷惑をかけたという状況に対して謝罪しましょう。
例えば、「この度は大変申し訳ございません」という文章は、謝罪文ではありますが、何に対して謝っているのかがはっきりしません。「この度は、弊社製品『◯◯』の初期不良によりご迷惑をおかけしており、大変申し訳ございません」など、謝罪対象を明確にすることを意識しましょう。
内容や数量、期限、金額など、具体的な数字を挙げて、クレームに対する対策の詳細を示します。「〇月〇日までに、△個××します」など、具体的に説明しましょう。対策が未確定の事項があれば、「1週間ほど」「1,000個ほど」などと目安を示し、詳細が判明次第連絡することを伝えます。
商品トラブルが発生した際、原因究明を行うのは当然のことです。それを顧客にも包み隠さず伝えることで、真摯にクレームと向き合っているという姿勢を示すことができます。なお、すぐに原因が判明しない場合は、調査中であることを伝えて、後日改めて連絡する旨を記します。
同じ間違いで迷惑をかけることのないように、再発防止を約束しましょう。「この度のご指摘を真摯に受け止め、再発防止に誠心誠意努めてまいります」「このような不手際が起きないよう、今後は〇〇を徹底いたします」などと決意を表明します。メールでの謝罪は取り急ぎのものであることを伝え、場合によっては改めて電話でも連絡する旨を、添えておきましょう。
最後に改めて謝罪します。ぶしつけな結びにならないよう、丁寧な言葉遣いを意識しましょう。
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・メールソフトでテンプレートを管理する方法
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クレーム対応メールの具体的な文面は、クレームの内容によって変わってきます。しかし、よくあるクレームについては、返信用のテンプレートを用意しておくことで担当者の負担を軽減することができます。
ここでは、企業からのクレーム(商品不具合へのクレーム)と個人からのクレーム(店舗スタッフの対応に関するクレーム)それぞれについて、返信メールの文例をご紹介しますので、テンプレートづくりの参考にしてください。
件名:
■■の不具合に関するお詫び本文:
◯◯株式会社
資材部
●●様平素は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
△△株式会社、法人営業部の▲▲と申します。この度は、弊社製品の不具合によりご迷惑をおかけしており、
誠に申し訳ございません。本日中に新しい■■を手配し、●●様宛に発送いたします。
なお、不具合発生の原因については、
現在、品質管理部の担当者が調査を行っております。
原因がわかり次第、ご報告をいたしますので、
恐れ入りますが、今しばらくお時間を頂ければ幸いです。今後このような事態が起こりませんよう、原因を明らかにし、
再発防止を徹底する所存でございます。この度は誠に申し訳ございませんでした。
まずは取り急ぎ、ご連絡申し上げます。
件名:
■■の件についてのお詫び本文:
●●様平素は格別のお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。
株式会社△△の▲▲と申します。先日は、弊社◯◯店に足をお運びくださり、誠にありがとうございました。
その際、担当させていただいた者の言動に問題があり、
ご不快な思いをされたとのこと、誠に申し訳ございません。ご指摘の点について、当該社員にお客様のお声を伝え、厳重な注意を行いました。
今後、このようなことがないよう、社員教育に一層の力を入れていく所存です。
どうか今後とも変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。
自社に落ち度がなくても、顧客の誤解や思い込みなどによりクレームが発生してしまうことがあります。このような場合でも、頭ごなしに相手の間違いを指摘するのではなく、できるだけ相手に不快感を与えずに誤解を解くことを意識しましょう。
参考までに、返信メールの書き方のポイント2つと、自社に落ち度がない場合の文例として、顧客が製品の発売日を知らなかったケースを取り上げます。
相手の気持ちを和らげる、やわらかい言葉(クッション言葉)を使いましょう。「恐れ入りますが」「ご迷惑をおかけいたしますが」「よろしければ」などの表現を使い、丁寧な文面を心掛けてください。
自社に落ち度がない場合でも、クレームメールへの返信は注意深く行います。そうしないと、相手をより不快にさせてしまったり、恥ずかしい思いをさせてしまったりする可能性がありますので、注意しましょう。
クレーム対応では、対応できないことをはっきりと伝えることが大切です。例えば、〇日以内の取り換えを要望されているが、返品や交換のための在庫が不足している場合、「〇日以内にすべてお取り替えすることができません」などと伝えます。それと同時に、いつまでなら取り替えができるかを示しておけば、相手はその間にどう対処すべきか判断しやすくなります。
(顧客が製品の発売日を知らなかったケース)
件名:
製品の配送日についてのご案内本文:
●●様平素は格別のお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。
株式会社△△の▲▲と申します。この度は、弊社製品「◯◯」をお買い上げいただき、誠にありがとうございます。
また、製品の配送日について、ご心配をおかけしており、申し訳ございません。
「◯◯」につきましては、製品案内ページに記載のとおり、
◯月×日が発売日でございます。
そのため、ご注文からお届けまでに1ヵ月程度のお時間を頂戴しております。大変恐縮ですが、発送完了後、すみやかにご案内いたしますので、
今しばらくお待ちいただければ幸いです。なお、製品の発売から発送までには、
最大で3日程度お時間をいただく場合がございます。
できる限り迅速にお手元へお届けできるよう努めます。お待たせして申し訳ございませんが、何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
クレーム対応は厄介だと思われがちですが、自社製品やサービスの課題に対する気づきのきっかけとなりますので、記録して改善につなげましょう。クレーム対応を顧客獲得のチャンスと捉えることもできます。不満が解消した顧客は満足度が上がり、それが再購入決定率向上につながることもあります。これには記録の共有が欠かせません。メールソフトでは難しい場合、過去の履歴を時系列で確認できるメール共有ソフトの使用をおすすめします。
このブックでは、これらのことを紹介しています。
info@のような複数人で使用するメールアドレスをお使いの方は必読です!