LTVとは「Life Time Value」の略称であり、日本語では「顧客生涯価値」と表されます。これはサービスや商品に対し、顧客が生涯を通じてどれだけの価値を企業にもたらすのか、という考え方です。
単純化した計算ですが100円の利益が出る商品を毎日購入する顧客がいたとして、1年(365日)継続すれば3万6,500円の利益を生み出します。仮に1年目の利益をすべて広告に費やしたとしても、2年間の購買を続ける顧客を獲得できるのであれば、3万6,500円の利益は確保できることがお分かりいただけるでしょう。企業間の取引の場合は単価が大きくなりますから、LTVの重要性は更に高まります。
LTVの基本的な計算式は「年間取引額×収益率×継続期間」ですが、サービスや商品に対しての計算方法としては実用的ではありません。ここでは顧客当たりの平均LTVを全体の収益を基準に算出してみましょう。
例えば図【顧客あたりの平均LTVの計算例】のように、A社が「1億円」の初期投資をして「100人」の顧客を獲得したとします。さらに平均顧客単価が「200万円」、顧客当たりの維持費用が「50万円」だとすれば、1年目の利益は「1億5000万円」。そこから初期投資の「1億円」を引いた「5,000万円」がLTVの合計値です。
そして顧客当たりのLTVは「50万円」となります。顧客維持率が年間80%とすると5年目の顧客当たりのLTVは「404万円」。
いっぽうB社の場合、顧客当たりの維持費用を「25万円」とA社の半額で済ませ、顧客維持率が年間50%になったと仮定すると、5年目の顧客当たりのLTVは「299万5,000円」でした。B社の方が2年目までの利益は高いですが、5年間の業績で見るとA社はB社の約1.35倍の利益を上げており、6年目以降も差は開く一方でしょう。
比べてみると既存の顧客を大切にすることが、いかに長期的な利益につながるのかがよく分かります。
【顧客あたりの平均LTVの計算例】
昨今、営業部門の新たなスタイルとして注目されている「インサイドセールス」。その目的や意味から、導入と活用のポイントについてわかりやすく解説します。
LTVの考え方は計算式による数値だけでは測りきれません。例えば現在の顧客である企業の担当者が転職や起業をした場合、そこから新しい顧客を開拓するチャンスも広がるでしょう。顧客の満足度の向上を図り、末永いお付き合いをすることは、目先の利益以上の価値があります。そして企業が長く続くほどに、LTVは重要性を増していくでしょう。
例えば、創業から100年以上続く老舗企業は日本に10万社あると推計されていますが、創業当初から付き合いを続けている顧客が大きな支えになっている場合が特に多いそうです。
しかし150年以上続く日本の老舗企業は2万社、200年以上ともなるとわずか1,000社。割合的には50年間で20%、100年間で1%の会社しか生き残っていません。その衰退の主な理由は、新規顧客の開拓に力を入れ、既存の顧客を蔑ろにしたことだと言えます。
既存の顧客の満足度を高めることは大切ですが、だからといって新規顧客を開拓する「顧客づくり」を疎かにして良い訳ではありません。どれだけ高い維持率を達成しても、100%でなければいつか顧客はいなくなるでしょう。
しかし世界規模でマーケットが縮小し、国内でも少子高齢化が進んでいるため、現在での新規開拓に必要な平均的費用は、顧客の維持費用の8倍と言われています。その費用を捻出するためにも、顧客維持率を高める経営戦略「顧客つづき」、そして顧客が離れないようにする「顧客つなぎ」によって少しでも利益を高めることが重要なのです。
セールスプロモーションや定期点検の回数を増やすといった「顧客つづき」に関して力を入れている企業は多いですが、「顧客つなぎ」は各種お役立ち情報提供サービスや情報誌の発行、企画のご提案など打つ手が異なるため、対策を見落としているケースが目立ちます。
かつて顧客の担当者が入れ替わった直後に、契約が打ち切られてしまった経験はないでしょうか。商品やサービスのアフターフォローを単純に充実させるだけでは、離れていく顧客を繋ぎ止めることができない場合も多々あるのです。
「顧客つなぎ」の秘訣は潜在的なニーズを満たすことにあります。そのための指針となるのがLTVを中心とする顧客データの分析結果です。そうした貴重な情報を、商品やサービスを売り込むためだけに使用してはいないでしょうか。
顧客データの分析結果は新しいご提案をするために有効活用することをおすすめします。
組織のなかで一元管理をして、顧客とのより深い関係性を構築するために役立ててください。同業他社には真似のできないようなアイディアを閃くためのヒントが隠れているはずです。
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