メールワイズ by サイボウズ

お客様相談室が変われば、会社が変わる――カルビーお客様相談室

顧客対応
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この記事の内容

    苦情処理係?いえ、「ファンを作る」部署なんです

    カルビー株式会社のお客様相談室による著書『クレーム客をファンに変える仕組み』(日本実業出版社)には、マニュアルを超える真摯なお客様対応のしくみについて解説されています。カルビーのお客様相談室は、ほかの企業と比べて何が違うのでしょうか。
    お客様相談室で16年にわたり消費者と向き合ってきた石川清美さんに、顔の見えないメールでも細やかな対応を欠かさない、カルビー流コミュニケーション術について、話を伺いました。

    「クレーム」ではなく「ご指摘」

    ――お客様相談室の行動規範とポリシーについてお聞かせください。

    石川:まず大きな基本指針として、「全件対応」があります。電話やメール、手紙など、さまざまな媒体を通じて、カルビーに対するご意見、ご感想をいただきますので、それらすべてに対応することを必須としています。「カルビーって、ほかの企業と違うね」と差別化を図り、ファンづくりを徹底するよう、活動しています。

    私たちは「クレーム」という言葉は使わず、「ご指摘」と呼んでいます。もし、お客様から「虫のような黒い物が入っていた」というご指摘があれば、きちんと調査をした上で「黒い部分はじゃがいもの芽や皮でした」などとご報告します。そうするとお客様は「虫じゃなかったんだ」と安心し、「じゃあ、また買おうか」という気持ちになりますよね。クレーム処理ではなく、関係修復ができる機会ととらえています。

    ――全件対応というと、かなりの量ですよね。ご指摘の場合は現品を送ってもらうのでしょうか?

    石川:着払いで商品をお送りいただく方法が一般的かと思いますが、カルビーでは宅配便をご自宅に手配し、お客様には玄関先でドライバーさんへ手渡していただく形をとっています。なるべくお客様の手間を減らすようにしたいという思いです。

    最近は「はっきりとした原因を知りたい」という方が多いので、まずは現品をお預かりさせていただきます。その後、各工場にいる品質管理担当者に調べてもらってから、書面によるご報告書をお送りしています。

    ――お客様相談室の役割について、どのようにとらえていらっしゃいますか?

    石川:まず、お客様に対しては、会社に対する信用や安心感を持ってもらう役割があります。また、社内に対しては、今お客様がどんなことを喜ばれているのか、どんなことに困っているのかを知ってもらう必要があります。そこで、相談室から毎日、ピックアップした「お客様の声」を、全社員に配信しています。

    ――お客様相談室の変遷についてお聞かせください。

    石川:お客様相談室ができたのは1995年です。PL法(製造物責任法)が施行されたことにより、製品に不具合があった場合の窓口として設置しました。その後、より迅速にお客様対応を行うため、全国の支店にお客様相談室を設置しました。

    かつては、本社で受け付けていたのはお電話とお手紙だけで、メールは外部へ業務委託をしていました。ただ、ここ数年、お客様はアレルギーについてなど、細かな情報の開示を求めるようになってきたので、より専門的できめ細やかな対応を行うために、2017年から内製化し、メール対応も社内で行うことにしました。結果としては、お客様へ迅速かつ丁寧な対応ができるようになり、とても良かったと感じています。

    ――内製化というのは、社内のスタッフを増やしたのでしょうか?

    石川:そうですね。元々、業務委託でお願いしていた外部スタッフは5名だったので、5名を新たに募集しました。企業によっては、お客様相談室という部署自体をアウトソーシングしているところもあります。弊社でも、そうしたほうがいいといった意見はありましたが、顧客ファーストを目指すという意味で、内製化は必然的な流れだったと思います。

    定型文はNG、その人だけに向けた返信を

    ――メールでの問い合わせは、どのような内容が多いのでしょうか?

    石川:ご指摘やアレルギーに関するご相談もありますが、必ずしも緊急の用件ばかりというわけではありません。家に帰ってきて一息ついたときに、なんとなく食べた商品の感想を送ってくださる方も少なくないですね。期間限定や数量限定の商品もあるので、「また食べたいと思ったのに、もうお店になかった」といったお問い合わせも多く寄せられます。

    ――メール対応の業務フローは?

    石川:まず大きく「ご指摘」と「それ以外」に分けて、詳細を記録した「お客様カルテ」を作成します。ご指摘で電話番号が記載されているお客様については、まずは電話対応のチームで対応してもらいます。ご相談に関しては内容に応じて担当者が調査し、48時間以内に返信するルールになっています。

    メールの数はだいたい1日20通、月に500~600通くらいでしょうか。メールチームのメンバーは自分を入れて5名で対応しています。

    ――メールでの問い合わせで注意しているポイントは?

    石川:電話と違って、文字だけのコミュニケーションなので、お客様の温度がわかりにくいんですね。例えばご指摘でも、「ポテトチップスを開けたら、虫のような物が入っていました」としか書かれていないケースもあります。そうすると、お客様はお怒りなのか、ご不安なのか、それほど気にしていないのか、ほとんどわからない。

    そこで重要なのが「リーディング」です。本文がたった2行であっても、商品に関してどれくらい記入していただいているか、送信時間、メールアドレスのつけ方など、そこにある情報すべてから読み取る努力をしています。1通のお客様にかける時間は、「リーディング8割、ライティング2割」。これが最も重要です。

    あとは、誰にでも使えるような「定型文」にしない。いわゆるテンプレート的な文章は絶対に禁止です。

    ――その対応だと、相当な手間と時間がかかりますよね?

    石川:定型文を使うのであれば、対応するのは誰でもいいんですよ。でもそうすると、私たちが掲げている
    「ONE to ONEの対応」と「真の顧客ファースト」というビジョンが達成できません。

    例えば、「この味を復活してほしい」と言われても、実際にはすぐに応えることができない。それでも、「カルビーにメールして良かった」「大事に扱われた」とお客様が感じられるような対応ができなくてはいけない、と考えています。

    ――「この味を復活してほしい」というメールが来た場合は、どのような返信をするのですか?

    石川:「中学生のころによく食べていた、あの商品を復活して」という内容であれば、結論としては「今すぐにということはできませんが、商品開発担当には伝えます」という回答になります。ただ、それだけで終わりにはしません。

    お客様が「中学生のころによく食べた」とおっしゃっているので、逆算すると10何年前か、そうすると当時、こんなテレビが流行っていたな、とか、当時お客様がどんなふうにカルビー商品を食べていたかを想像する。そして「私たちの商品が、大人になっても思い出せるくらい記憶に残っている、そのことがすごくうれしいです」というメッセージを書きます。その人だけの返信を常に心掛けているんですね。幸いにも返信を多くいただくので、ある程度は誠意が伝わっているのかな、と感じています。

    ――メールの問い合わせで印象に残っているエピソードは?

    石川:「異物が入っていた。長年愛用していたのに裏切られた」というご指摘がありました。まずは、気持ちを傷付けてしまったことにお詫びをし、原因については現品をお預かりして、工場できちんと調査をしてご報告しました。その結果、「とても迅速な対応でした。何事もミスは付き物です。これからも買います」とおっしゃっていただいたんです。「裏切られた」とおっしゃっていたお客様との関係を修復することができて、本当に良かったなと思いました。

    ご指摘は経験上、難しい言葉を並べてきれいな文章を書くのが一番ダメな対応だと感じています。少しくらい文法がおかしくても、私たちが本当に申し訳なく思っていることをお伝えする。その姿勢が重要ですね。

    ――返信メールの文面は、それぞれのスタッフが考えているのでしょうか?

    石川:メンバーが返信を書いても、すぐにはお客様に送信しません。リーダーである私が、お客様の真意とずれていないかを必ずチェックします。お客様の文面をリーディングして、「ここは余計かもしれない」「この部分をもう少し受け止めてあげないと、誤解を招くのでは?」とメンバーとディスカッションし、OKが出て初めて送信となります。もし私が不在であれば、さらに上長が確認する。これは全件です。

    OKを出すまでは、何度も書き直しを指示します。とはいえ私も主観ですから、迷ったときは上長や電話対応スタッフの意見を聞いたりもしますね。「こんなメールが来たけど、どう受け止めたらいいのかな」「どういう説明がわかりやすいかな」と、補完し合いながら対応しています。

    「受け手」から「攻め」の部署へ

    ――お客様相談室が会社に与える影響について、どのようにとらえていらっしゃいますか?

    石川:かつては、「お客様相談室=クレーム処理係」だと認識されていた時代もありました。でも今は、「消費者が何を言っているのか、その内容が会社を動かす」と全社員が感じています。

    私たちの活動のひとつに、「お客様の生の声を聴いてもらう」という活動があります。お客様相談室の一角にモニタリング席があり、そこに社長を含む役員が来て約2時間、実際に対応している様子を、ヘッドセットをつけて聴いてもらいます。また、全国の工場や本社の従業員にもモニタリングを行っています。そういった活動やトップからの発信によって、徐々に会社が変わってきた実感はありますね。

    ――ファンを増やす施策については?

    石川:以前、お問い合わせいただいた商品が再発売したり、別の味が出たりした場合は、メールでお知らせしています。

    ただ、あまり過去までさかのぼってしまうと、「私の個人情報はいつまで残っているのか」と不安になる方もいらっしゃいますので、だいたい半年くらいまでさかのぼってメールをピックアップし、「◯◯味に関してお問い合わせいただいた方に、新発売のご案内をお送りしています」という機械的な文面にしています。

    最後に、「もしお召し上がりになりましたら、ぜひ感想をお寄せください」と結ぶ。そうすると、また感想を送ってきてくださる方もいらっしゃいます。お客様相談室は、まさにファンづくりがミッションの部署なんです。

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